2017
09.20

米軍、北制圧へ第3艦隊投入か 韓国紙が半島展開の大幅増強報道、識者「本気なら空母3隻でも4隻でも派遣できる」

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 北朝鮮の弾道ミサイル発射を受け、国連安全保障理事会は15日午後(日本時間16日未明)に非公開の緊急会合を開催した。国連安保理は11日、制裁強化決議を全会一致で採択したばかりだが、これを無視する北朝鮮を「挑発的」と非難し、制裁の「完全履行」を国連加盟国に迫った。ドナルド・トランプ米大統領も「強固な軍事オプション」の存在を明言した。西太平洋を担当海域とする米海軍第7艦隊だけでなく、東太平洋を担当し、空母4隻を保有する米海軍第3艦隊の本格投入を選択するとの見方もある。

 「(北朝鮮は)隣国と全世界を完全に侮辱していることを再び示した」「われわれには、平壌(ピョンヤン)の脅威に対抗する『強固な軍事オプション』がある」「米国と同盟国は決して平壌の脅しに屈しない。われわれのオプションは効果的かつ圧倒的だ」

 トランプ氏は15日、ワシントン郊外のアンドルーズ空軍基地で演説し、「6回目の核実験」に続き、日本上空を通過する弾道ミサイル発射を強行した北朝鮮をこう非難した。側近が以前、「この地域に対する効果的なオプションはない」としていたのに比べると、かなりの軌道修正だ。

 この発言の直前、ハーバート・マクマスター大統領補佐官(国家安全保障問題担当)と、ニッキー・ヘイリー米国連大使も「最優先ではないが、われわれには北朝鮮をストップさせる『軍事オプション』がある。ジェームズ・マティス米国防長官には、さまざまなオプションがあるはずだ」と、ホワイトハウスでブリーフィングした。

 これに対し、朝鮮中央通信は16日、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が、核戦力完成の目標は「終着点にほぼ到達した」という認識を示したと報じた。このまま狂気の暴走を続けるつもりのようだ。

 米調査会社ギャラップは15日、北朝鮮の「核・ミサイル」問題で平和的解決が見込めない場合、米国民の58%が「軍事行動を支持する」考えだとの世論調査結果を発表した。

 新たな局面に入った朝鮮半島情勢に対応するため、世界最強の米軍の動向が注目されている。

 これと符合するのか、韓国紙、東亜日報(日本語版)は12日、以下のようなタイトルの記事を報じた。

 《米太平洋第3艦隊の原子力空母船団(打撃群)と原潜、韓(朝鮮)半島展開を大幅増強へ》

 第3艦隊は、米カリフォルニア州サンディエゴ基地に拠点を置き、国際日付変更線以東の太平洋を担当海域としている。朝鮮半島は通常、神奈川県・横須賀基地に駐留し、西太平洋を担当海域とする第7艦隊がカバーしているが、北朝鮮の暴走を受けて、大幅増強に乗り出す方針のようだ。

 同紙は「第3艦隊の空母船団と原潜などを韓半島により頻繁に投入する考えを示したものだ」「米国の拡張抑止力の核心である空母船団を韓半島に定期的に展開するためには、第7艦隊の戦力だけでは限界があり、第3艦隊を積極的に活用するという趣旨だ」などと、複数の消息筋の話を伝えた。

 第3艦隊の内容にも同紙は触れている。

 ロイターは昨年6月15日、「第7艦隊は、空母打撃群(艦隊)と艦艇80隻、航空機140機で構成される。第3艦隊では、空母4隻を含めた100隻以上の艦船を保有する」と報じている。

 第3艦隊の原子力空母の朝鮮半島派遣については、米太平洋艦隊のスコット・スウィフト司令官が今月5日、聯合ニュースのインタビューに対し、「原子力空母2隻の合同演習も選択肢になり得る」と述べていた。

 米空母打撃群は、強力な航空戦力を持ち、1打撃群で中堅国の軍事力に匹敵する戦力を備えているといわれる。第7艦隊と第3艦隊の空母打撃群が朝鮮半島周辺に派遣されれば、正恩氏への牽制(けんせい)になる。

 米原子力空母2隻による朝鮮半島周辺への同時展開は今年5~6月にもあった。第7艦隊所属の「ロナルド・レーガン」と、第3艦隊所属の「カール・ビンソン」で、異例の態勢といわれた。

 米国と北朝鮮は今年6月以降、水面下で極秘接触しているとされる。

 このためか、レッドラインとみられた「6回目の核実験」後も、米国は軍事行動を選択していない。

 第3艦隊の本格投入が事実であれば、これは何を意味するのか。

 軍事アナリストの黒井文太郎氏は「米西海岸から空母1隻を西太平洋に回すということは、北朝鮮と中国に対する『一種の圧力』という意味合いがあるかもしれない。ただ、米国が本気で軍事的圧力をかける気になれば、空母を3隻でも4隻でも派遣できる。まだ、ジャブ的な脅しかもしれないが、今後、北朝鮮が弾道ミサイル発射や核実験を続ければ、徐々に増やしていく可能性はある」と語った。