2018
03.10

TPP 日本、主導権握り拡大へ 保護主義牽制、米復帰促す

TPP


 米国を除く環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)で参加11カ国が正式合意した。日本政府はまずは発効を急ぎ、TPP11をモデルにした自由貿易の推進を狙う。日本は主導権を握りつつ加盟国の拡大を見据えるが、鉄鋼の輸入制限の発動を決めるなど、今後は保護主義的な動きを強める米国をいかに取り込めるかが課題となる。

 「コロンビアが関心を示している。そうした国や地域にTPPに関する情報提供を行っていきたい」

 TPP交渉を担当した茂木敏充経済再生担当相は署名式が行われたチリで8日午後(日本時間9日朝)、具体的な国名を挙げながら、新規加盟国を増やしていく考えを強調した。

 TPP11には、自国の経済成長につなげようと英国や韓国、タイなども興味を示す。こうした国を歓迎する背景には、「米国をTPP11の枠組みに復帰させる」(交渉筋)思惑もある。

 トランプ米政権はTPP復帰を検討しているものの、実際には再交渉を条件にするなど強硬な姿勢を崩していない。このため、日本政府は米国抜きでも自由貿易圏を拡大できる姿勢を明確にし、あくまでTPP11の交渉をリードしてきた日本が主導権を握る形で、米国の自発的なTPP復帰を促す狙いだ。

 トランプ政権は自国の利益を追求し2国間交渉を優先させるが、TPP11はこうした「米国第一主義」への牽制(けんせい)にもなる。

 茂木氏は8日、「自由で公正なルールに基づいた貿易や投資を、TPPでも進めることを世界に発信する」と述べ、輸入制限の発動を決めたトランプ政権にくぎを刺すことも忘れなかった。

 日本はTPP11の発効を急ぎ、中国や東南アジア諸国連合(ASEAN)など16カ国が交渉に参加している東アジア地域包括的経済連携(RCEP)といった他の通商交渉にも「弾みを付ける」(世耕弘成経済産業相)構えだ。

 当初、TPP11の発効は2019年の前半を想定していたが、「期待以上に速いペースで各国が手続きを進めている」(茂木氏)として、年内の発効も視野に入ってきた。

 来年は大阪市で20カ国・地域(G20)首脳会議が開かれる。トランプ米大統領をはじめとする各国の首脳に直接参加を促す絶好のチャンスとなるだけに、TPP11を早期に発効させる意味合いは大きい。(サンティアゴ 高木克聡)