08.31
北朝鮮ミサイルが日本上空通過、その時何が起きたか
[29日 ロイター] – 北朝鮮が29日に発射した1発の弾道ミサイルは、北海道の上空を通過し、太平洋に落下した。同国のミサイルが日本の上空を通過したのは2009年以来。
ミサイルが通過した地域では防災無線などを通じてサイレンが鳴り響き、安倍晋三首相は「わが国を飛び越えるミサイル発射という暴挙は、これまでにない深刻かつ重大な脅威」と北朝鮮を非難した。日本列島に戦慄を与えた今回のミサイル発射を、グラフィックスで振り返る。
北朝鮮は29日午前6時前、首都平壌の近郊から弾道ミサイル1発を発射した。ミサイルは高度550キロに達し、北海道の上空を通過しながら襟裳岬の東方およそ1180キロの太平洋上に落下した。ミサイルの飛距離は2700キロに達したとみられている。朝鮮半島から東に向けて発射され、韓国に配備されている高高度防衛ミサイル(THAAD)の射程外を飛行した。
<低く抑えられた高度>
軍事専門家によると、今回の発射には最近開発された中距離弾道ミサイル「火星12」が使用されたとみられる。
5月14日に初めて発射に成功した際、火星12は意図的に高高度へ打ち上げる「ロフテッド軌道」で打ち上げられ、高度約2100キロの上空に達した。これを通常軌道で発射した場合、理論上、火星12は4524キロ飛行することが可能で、米領グアムを射程に捉える。
今回の発射では高度は550キロにしか達しておらず、低い高度で打ち上げられたと軍事専門家は指摘する。2700キロ飛行する場合、通常は高度700キロに到達するという。
高度が低く抑えられた理由は不明だが、それでもミサイルは国際宇宙ステーション(ISS)の軌道よりも高い位置を飛行した。
日本の北部地域の住民には、ミサイル発射を知らせる緊急警報が発せられた。北海道では、ミサイル発射の数分後に防災無線を通じて鳴り響くサイレンの音で多くの住民が目覚めた。また全国瞬時警報システム(Jアラート)や緊急情報ネットワーク(エムネット)がラジオ、テレビ、インターネット、携帯電話の文字情報で警報を発した。
29日、北朝鮮の弾道ミサイルが日本の方角へ発射されたことを受けて、全国瞬時警報システム(Jアラート)が発した警報が、各地の防災無線などを通じて発せられた。
Jアラートとは、ミサイル攻撃や空爆、津波や地震などの深刻な自然災害の際に国民に警報を伝えるシステム。
一方、エムネットはJアラートと共に運用される緊急情報システムで、Jアラートほどの即時性はないものの、災害や危険が起こりうる際の詳細や避難情報を伝える。
今回の発射情報は以下のように伝えられた。
5:58 北朝鮮の順安(スナン)から発射
6:02 Jアラートが「北朝鮮からミサイルが発射された模様」と発信
6:06―07 北海道の上空を通過
6:12 ミサイルが太平洋上に落下
6:14 Jアラート「上空を通過した模様」
6:16 エムネット「6時6分ごろ北海道地方から太平洋へ通過した模様」
6:29 エムネット「ミサイルは3つに分離し、6時12分ごろ、襟裳岬東方の太平洋上に落下したとみられる」
(Jin Wu、Weiyi Cai、Simon Scarr 翻訳:新倉由久 編集:下郡美紀)