2017
08.19

インターネットに次ぐ大革命「ブロックチェーン」で、私たちの暮らしはどう変わる?

Topic, 防災・セキュリティ

インターネットの出現に次ぐ大革命、それがブロックチェーンなんだという。

たかがデータベースというなかれ。こいつが世の中の仕組みを根底から変えてしまいかねないというのだ。そのわけを聞かせてもらおうと、我々は「Blockchain EXE(ブロックチェーン エグゼ)」というエンジニアコミュニティを訪ねた。

彼らは、ブロックチェーン革命を日本から起こそうという若きテクノ・サムライたちだ。

そもそもブロックチェーンとは?

――単刀直入に聞きます。ブロックチェーンって、なんですか?

従来のデータベースというのは、データセンターとかの巨大なコンピュータ群がドーンとあって、そこにデータをためていくもので、中央集権型なんて言っています。ブロックチェーンはそれとは違って、大勢の参加者がインターネットなどのネットワークを通じて自分のコンピュータでデータを共有しあう、分散型自立システムというものなんですね。
――たとえば1万人が参加するデータベースなら、1万人がデータを共有するわけですか? そうしたら、データがバレバレじゃないですか?

ところが、そうではないんです。データ自体は見れますが、名前や住所などの個人情報はブロックチェーンに書き込まないことで誰のデータか分からない仕組みになっています。そしてここが肝心なのですが、1万人がデータを共有しているので、データを改ざんしようと思ったら、少なくとも半分より多く、5001台以上のPCのデータを同じように書き換えなきゃならない。そんなこと、現実的にほぼ不可能です。つまり、データを改ざんすること自体がそもそも不可能なのがブロックチェーンなんです。
――それにしても、なぜブロックのチェーンって名前なんですか?

たとえば、ある出来事を起きた順に記録するだけのデータベースを考えてみましょう。ブロックチェーンでは、一定時間の範囲で起きた出来事をまとめてひとつのブロックにします。時間経過と共にこのブロックがどんどんできて鎖のようにつながっていく。それでブロックチェーンと言うんです。前のブロックのアウトプットが次のブロックのインプットになっています。これによって一つのブロックを改ざんするとそれ以降のブロック全てを改ざんしなければならなくなります。これがブロックチェーンが改ざんに強い仕組みです。
――なるほど〜。

ブロックチェーンが安全・安心であるカラクリ

――ということは、絶対に改ざんされない安全なデータベースがブロックチェーンってことですか?

それだけではありません。たとえば共有されることで参加者全員が監視することになるので不正が極めて難しい。しかも、中央にドンと置かれた巨大コンピュータ群が必要ないので、身軽で安価で安全。ほかにもさまざまな長所があります。
加えて重要だと思っているのは、今のインターネットが「情報のインターネット」だとしたら、ブロックチェーンがもたらすのは「価値のインターネット」ということなんですね。
――価値のインターネット・・・・・・?

昔、インターネットが登場したばかりの頃、誰でもテレビ局が持てるとか、誰でもタレントになれるとか言われたのですが、それが実現したのは20年後の今ですよね。小学生の憧れの職業のベスト10にYouTuberが入るくらいですもん(笑)。同じように、ブロックチェーンの出現によって、やがて誰でも銀行がつくれるようになると思うんですよね。
――僕でもですか?

たぶん(笑)。ブロックチェーンは仮想通貨ビットコインのシステムとしてすでに活躍しているのですが、それは誰が誰にいくら支払ったかというお金の移動が正確かつ透明に記録されるからなんです。つまり、スーパーコンピュータやそれを管理する大企業がなくても、ブロックチェーン自体の仕組みが自動的にお金の移動という取り引きを安全に行ってくれる。それが「価値のインターネット」と言われるゆえんです。しかも、大きな投資をしなくてもブロックチェーンは始められる。インターネット内での取り引きだから、ATMも店舗もいらない。さらに、将来的には貸し付けや投資などもブロックチェーンを使って出来るようになるでしょう。だから、誰でも銀行がつくれるというわけです。
――要するに、既存の銀行みたいに大勢の人間や建物や設備がなくても、取り引きを可能にしてくれる超便利なシステムがブロックチェーンだということなんですか?

そういうことです。すでにビットコインの存在がその有効性や安全性を証明しているんです。


さらに言えば、ブロックチェーンは現実の物理法則をデジタルの世界に持ち込むものと私は考えているんです。
――というと・・・・・・?

たとえばインターネットでメールに写真を添付して誰かに送るとしますよね。そのとき、送った写真のオリジナルは手元に残ります。つまり、デジタルな世界で写真が送られたということは、写真がコピーされたということです。でも、物質世界において印画紙にプリントされた写真を誰かに送るということは、その写真という物質が移動することで、自分の手元からは写真が無くなってしまうわけです。先ほどのお金の取り引きでも、お金がコピーされたらまずいわけですよね。
――確かに。

お金を誰かに渡したら、その分のお金が自分の財布からなくなる。そういう当たり前の物理法則を、デジタルの世界で仮想的かつ自動的に実現してくれるのがブロックチェーンなんです。
――なるほど。改ざんもできない、参加者みんなが監視している、データがブロックになってどんどんつながっていく、そういう性質がコピーを許さないということでしょうか?

まあ、そういうことです。
――でも、さっき、データと個人情報は分離されているので誰のものかはわからないと言いませんでしたか?

最新の秘匿アセット機能ですと、たとえば、AさんがBさんに1万円払ったという具体的な情報は当事者にしか見えません。でも、誰かが誰かにお金を払ったぞという取り引き自体は誰もが見ることができるんです。つまり、その時点で、取り引き自体は参加者全員によって認められたといってもいいわけです。

そしてそのデータは過去にさかのぼっても確認できますから、払った、払っていないといった問題は起きません。つまり、物理的にお金が誰かから誰かに移動したと同じことが、デジタルの世界で起きているといっていいわけです。
――うーむ。なんとなく、ブロックチェーンの正体がわかってきたような・・・・・・。

ブロックチェーンで変わる私たちの未来

――では、ブロックチェーンによって、僕らの社会はどんなふうに変わっていくんでしょうか?

ブロックチェーンを利用してさまざまな売買や取り引きなどのサービスを可能にするプログラムのことをスマートコントラクトと言うんですが、いろんな種類のスマートコントラクトがつくられて、それでいろんなビジネスをする人や企業が登場してくるでしょうね。このスマートコントラクトを使えば、個人と個人の取り引きが安全かつスピーディーにできるようになります。
――スマートコントラクト・・・・・・ですか?

えーとですね、史上初のスマートコントラクトは自動販売機だったと言う人がいます。誰でもコインを入れればすぐにコーラが買える。つまり、お金とコーラを交換するという契約(コントラクト)が、機械によって自動化されているわけです。いちいちお店の人にお金を払う必要がない。だからスマートコントラクト。それと同じことをブロックチェーン上で実現するわけです。

その気になれば、誰でも安全に、安心して個人と個人の取り引きが可能になり、世の中がガラリと変わる。私としては、そういういろんなスマートコントラクトをつくって無料に近い形で利用できるようにし、新しいビジネスを立ち上げてもらいたいなと考えています。
――なるほど!!

ほかにもいろんなことに応用できる可能性があります。たとえば、医療などに代表される重要なデータの公開と共有です。世界中の医療機関がブロックチェーンでデータを共有し、投薬や手術や、とにかくいろんな医療行為をどんどん記録していったとしたら、どの薬の効き目がいいかや、どんな手術の成功率が高いかなどがわかる、ものすごく有益なデータベースができますよね。しかも履歴もトレースでき、改ざんできないから、とても正確なデータです。

――でも、それだと誰がどんな病気したとか、どのお医者さんが手術を失敗したとか、プライバシーだったり、知られたくなかったりすることがバレバレでは?

確かに現状のブロックチェーンに全ての情報を記録してしまうと、個人情報とデータを切り離すのは難しいです。従って、どこまでのデータをどのようにブロックチェーンに書き込むべきかという判断が重要となります。これは世界的にもニーズが高く期待されている部分であり、ブロックチェーンを活用しつつ、プライバシーに関わる情報と共有すべき情報を分離する試みが行われています。これが実現すれば、個人情報などをまったく伏せたまま、必要な医療情報だけを引き出せます。そんなデータに誰でも無料でアクセスできるなら、医療の発展に大きく寄与できると思うんですね。こういったブロックチェーン活用の試行錯誤は、医療以外のさまざまな分野でも行われていくでしょうね。
――私たちの普段の生活に直結したところでは、どのような変化が起こるのでしょうか?

たとえばこんなサービスが登場するかもしれません。IoTが進んで冷蔵庫の中のビールが減ったとかが冷蔵庫内のセンサーでわかり、それが自動的にブロックチェーンに記録されていくとします。すると、たとえば近所の酒店とスマートコントラクトでビールの残りが5本になったら1ケース補充するという契約がされていたら、注文しなくても自動的にビールが配達されたりするわけです。
――でも、それって、別にブロックチェーンじゃなくても、その近所の酒店と直接インターネットで連絡しあえばいいんじゃないですか?

冷蔵庫の中にあるのはビールだけじゃなくて、野菜もあるし納豆もあるし肉もあります。それらを扱う店の過去の業務履歴や、扱っているあらゆる商品の信頼性を担保できるからこそ、ブロックチェーンを活用して自動化する価値があるのだと思います。
――たしかに、うむ。

これからAI(人工知能)がどんどん発展していくと思いますが、やがて、AI自身がAIを開発するようになるでしょう。その時、人間はAIの開発作業をどうやってチェックすればいいのかという問題が出てきます。おそらく、これもブロックチェーンを使って履歴を追うことで解決できると思います。
会社の概念も変わるかもしれませんね。ブロックチェーンが個々の企業を横断して結びつけるようになれば、会社の壁もなくなるのではないでしょうか。また、社員が自分の仕事をこまかくブロックチェーンに記録することによって、上司との関係も変わっていくかもしれませんね。
そうですね。手柄は自分のものにして、ミスは部下のせいにするような上司がいるじゃないですか(笑)。ブロックチェーンで仕事の中身が正確に記録されたら、そういうやっかいな上司はいなくなるかもしれませんね(笑)。
――いいですねえ(笑)。聞けば聞くほど、ブロックチェーンは無限の可能性を秘めたデータベースという感じがしてきました。ありがとうございました。

Blockchain EXE(ブロックチェーン エグゼ)とは
あらゆる産業に広く応用が期待されるブロックチェーンに関して、動作原理・基礎・応用・最新技術など、技術面の共有に重きを置いた、エンジニア及び技術に興味を持つ人達のコミュニティです。
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