2017
10.02

北朝鮮「アメリカの爆撃機を撃墜する」と警告、実際に可能なのか?

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10/2(月) 12:10配信

 北朝鮮は9月25日、トランプ大統領のツイートを宣戦布告と見なすと述べ、米軍のB-1Bランサー戦略爆撃機をたとえ領空外でも撃墜すると警告した。だが、そのような攻撃は、言うほど簡単ではない。


 アメリカは、北朝鮮の挑発的なミサイル発射や核実験への対抗措置として、しばしば北朝鮮に近い空域にB-1Bランサーを飛行させている。長大な航続距離と高高度性能を誇る超音速爆撃機だ。

韓国および自衛隊の戦闘機がしばしばB-1Bと合流する。北朝鮮国境近くの演習場に訓練用爆弾を投下することもある。

こうした動きに北朝鮮は怒りをあらわにしている。北朝鮮は同じような行動を取れるほどの空軍力を持っていない。北朝鮮は、8月にはグアムに向けてミサイルを発射する可能性を示唆していた。グアムには米軍の爆撃機が多数配備されている。そして今は、国際空域を飛行する米軍機を撃墜すると権利があると述べている。

韓国メディアは9月26日、北朝鮮が防衛体制を強化していると伝えた。警告を実行に移す準備を整えている可能性がある。

しかし北朝鮮の防空能力では、実行は難しい。

「北朝鮮の防空能力は相当の範囲をカバーするが、かなり時代遅れだ」と米シンクタンク、ストラトフォー(Stratfor)の上級軍事アナリスト、オマール・ラムラニ(Omar Lamrani)氏は我々に語った。

同氏によると、北朝鮮が保有しているのは、古い旧ソ連製戦闘機の派生型が若干数と、同じく旧ソ連のものを「模倣」した防空システム。例えば、ロシアのS-300システムをベースにした地対空ミサイル「ポンゲ5」(KN-06)などだ。

北朝鮮の地対空での防空能力は「高高度を飛行する航空機には全く脅威にならない。特に海上なら、なおさらだ」とラムラニ氏は述べた。

だが、北朝鮮には1つだけアドバンテージがある。奇襲攻撃だ。

航空機が防空識別圏に侵入または接近した際、通常は迎撃体制が取られる。多くの場合、戦闘機がその航空機に近づいて、防空識別圏に侵入または接近していることを知らせ、引き返すよう警告する。

米軍、韓国軍、自衛隊は、北朝鮮機が攻撃目標に十分接近する前に、簡単に撃墜できる最新鋭の戦闘機を保有している。だがアメリカと北朝鮮は休戦状態にあり、戦闘状態にはない。したがって北朝鮮機は、米軍の爆撃機または戦闘機にぎりぎりまで接近し、初歩的な武器で近距離攻撃を行うことができる。

北朝鮮には「先制攻撃というアドバンテージ」とラムラニ氏は述べた。しかし北朝鮮機が米軍機を撃墜した場合「彼らは大きな代償を払うことになる」。

こうした理由からラムラニ氏は、北朝鮮が先制攻撃を行う可能性は低いと考えていると述べた。前回、B-1Bが北朝鮮付近を飛行した際には、最新鋭の戦闘機4機が援護していた。ラムラニ氏によると、北朝鮮の戦闘機は旧式で、燃料不足のために訓練は不十分。アメリカ、あるいはその同盟国はすぐに反撃し、攻撃を仕掛けた北朝鮮機を撃墜するだろう。

加えて、韓国の情報機関はアメリカの北朝鮮専門メディアNKニュースに対し、北朝鮮はB-1Bの飛行ルートを追跡さえできなかったと語った。さらに北朝鮮を驚かせることを避けるために、米軍はB-1Bの飛行ルートを公開したと述べた。

現時点では、北朝鮮も、アメリカとその同盟国の空軍力に大きな差をつけられていること、そして攻撃を行えば「自殺攻撃」になることは認識しているはずだとラムラニ氏は語った。

source:Tyler Rogoway/Aviationintel.com via The Aviationist
[原文:Here’s what could happen if North Korea tried to shoot down a US bomber]
(翻訳:原口 昇平)