10.09
やはりコーヒーは健康にいい 1日1杯以上のコーヒーで女性の糖尿病患者の死亡率が低下
女性の糖尿病患者は、コーヒーや紅茶から摂取するカフェインの量が多いほど死亡リスクが低下し、長生きする可能性があると、São João病院(ポルトガル)のJoão Sérgio Neves氏が第53回欧州糖尿病学会(EASD 2017、9月11~15日、ポルトガル・リスボン)で発表した。
コーヒーを1日1杯以上飲む女性患者では、全く飲まない女性に比べて全死亡リスクが約5~6割低下したという。
糖尿病患者は普段、食事療法でカロリーや糖質、加糖飲料などを制限するよう指導されることが多いが、Neves氏によるとコーヒーと紅茶はそうした制限をしなくてもよい可能性があるという。ただし、こうしたカフェインの有益性は女性に限られるようだ。
積極的なカフェイン摂取が死亡率を低減
この研究は、1999~2010年の米国国民健康栄養調査(NHANES)のデータを用いたもの。1型糖尿病および2型糖尿病の女性患者1,568人と男性患者1,484人を対象に、全般的な健康状態のほか、コーヒーや紅茶、ソフトドリンクから摂取するカフェインの量について尋ね、カフェイン摂取量と死亡率との関連を調べた。
研究期間中に600人以上が死亡した。解析の結果、女性の糖尿病患者ではカフェイン摂取量が多いほど全死亡率が低下することが分かった。
人種や年齢、教育レベル、喫煙習慣などさまざまな因子を調整した解析から、1日当たりのカフェイン摂取量が100mg(レギュラーコーヒー1杯分に相当)未満の女性は、全く摂取しない女性に比べて死亡リスクが51%低く、1日100~200mg未満の女性では57%、1日200mg以上の女性では66%それぞれ全死亡リスクが低下した。
また、カフェインを主に「コーヒー」から摂取する女性は全死亡と心血管疾患による死亡のリスクが低下したのに対し、「紅茶」から摂取する女性ではがんによる死亡リスクが有意に抑えられることも分かった。紅茶を全く飲まない女性に比べて、紅茶を多く飲む女性はがん死亡リスクが80%低かった。
ただし、Neves氏らは今回の研究で紅茶を飲む人は総体的に少数だったと断っている。
以上から、Neves氏は「糖尿病の女性患者では積極的なカフェイン摂取が死亡率の低減につながる可能性がある。カフェイン摂取は普段の生活で簡単に実践できる予防策になる」と述べている。なお、今回はこれらの関連が示されたに過ぎず、カフェイン摂取の有益性を確かめるにはランダム化比較試験による検証が必要としている。
国立がん研究センターの研究でも有意差
またNeves氏は、糖尿病の男性患者でカフェイン摂取による有益性が認められなかった理由については不明としつつ、「心血管系のホルモンやホルモン以外の因子による生物学的な性差の影響が考えられるが、研究対象の男性患者数が有益性を検出するには不十分だったことによる可能性も否定できない」と説明している。
Neves氏によると、これまでの研究で糖尿病患者がコーヒーや紅茶を飲むとインスリン抵抗性が改善し、食後血糖値が良好に管理できる可能性が報告されており、これらの作用にはカフェイン含有飲料に含まれるミネラルやファイトケミカル(植物由来の化学物質)、抗酸化物質の関与が指摘されている。
いまや世界中の成人の8割以上がカフェインを摂取している現状からも、「カフェイン摂取による心血管疾患やがん、全死亡への影響を明らかにすることは重要な課題だ」と同氏はコメントしている。
学会で発表されたこの知見は、査読を受けた専門誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。しかし、コーヒーの摂取量と死亡率との関連性についての調査は、アメリカやヨーロッパで多数行われている――。
当サイトでもすでにコーヒーの摂取量と死亡率との関連性については以下の記事で言及している。『コーヒーのカフェインが死亡リスクを低下~「カフェイン中毒」を避ける賢い飲み方は……』
今年7月11日、米国内科学会が発行している医学学術雑誌の電子版に「コーヒーを飲む量が多い人は、コーヒーをまったく飲まない人よりも全死亡率(原因を問わない死亡率)と消化器疾患死亡率が有意に低かった」という、国際がん研究機関の調査結果が掲載された。
デンマーク、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、オランダ、ノルウェー、スペイン、スウェーデン、イギリスの10カ国の一般市民、45万1743人を対象に行われた大規模な調査だ。追跡年数は平均16.4年で、その間に対象者の4万1693人が死亡している。
調査の結果、コーヒーをまったく飲まない人に比べ、コーヒーをよく飲んでいる人の全死亡率のリスクは有意に低かった。また、コーヒーの摂取量が増えると、消化器疾患による死亡のリスクが低減していた。女性については、コーヒーの摂取で、循環器疾患・脳血管疾患による死亡のリスクが減っていた。
また、日本でも、国立がん研究センターが<習慣的コーヒー摂取>と全死亡・主要死因死亡との関連を調べている。結果として、コーヒーを1日3~4杯飲む人の死亡リスクは、まったく飲まない人に比べて24%低いことがわかった。さらに、飲む量が増えるほど危険度が下がる傾向が、統計学的有意に認められた。
どうしてコーヒーを摂取すると、死亡リスクの低下が見られたのか。国立がん研究センターの研究グループは次のように考察している。
①コーヒーに含まれるクロロゲン酸が血糖値を改善し、血圧を調整する効果がある上に、抗炎症作用があるといわれている
②コーヒーに含まれるカフェインが血管内皮の機能を改善する効果があるとされている
③カフェインには気管支拡張作用があり、呼吸器機能の改善効果があるのではないかといわれている
このような考察から、カフェインの薬理作用が死亡リスクの低下に役立っていると推測できる。
もちろん飲みすぎた場合は、カフェイン中毒という極端な例はあるが、日常生活でのコーヒーはどうやら死亡率を下げる可能性があるようだ。
(文=編集部)
(くまチューブ)