2017
07.16

「リッチスタン」とは何か(27)

リッチスタン, 世界経済, 日本経済

日本と世界の情報ブログより 2017-07-13 08:31:55
(27)加速する底辺への競争
 「オンデマンド・エコノミー」という言葉がアメリカを中心に飛び交うようになった。「お気楽経済」の意味で、サービス業などの単純労働を指している。よく知られているのがアメリカのタクシー業界である。アメリカの主要都市では、登録された一般車をスマホで呼び出し、どこからでも安い料金で目的地まで運んでくれるサービスが普及している。そのサービスで、ユーザーが得をし、運転を代行する一般人も小遣い程度の利益を得て生活費に回すことができる。
 しかし、その一方で、全米のタクシー業界は大きなダメージを受け、倒産の憂き目を見る企業も出ている。この全米アッシー君のSNSサービス(配車センター)を「ウーバー・テクノロジーズ」といい、一般庶民のお気軽労働の意味で「オンデマンド・レーバー」の一つとされる。オンデマンド労働はサービス業を中心に全米に拡大し、最底辺の労働者から、特定の企業、団体、組織に専従しないフリーランスの個人事業主や個人企業法人を巻き込み、やがて全労働市場を飲み込むと考えられている。
 アメリカは昔から「季節労働者」が大勢いて綿花やトウモロコシの収穫時期や、クリスマス商戦期間にパートもやる労働者が大勢いた。ところが、オンデマンド・エコノミーの時代では、1時間ごと、あるいは1トリップ単位で労働者を使えるようになった。使用する側にすれば、使い捨てが時間単位で容易になったのである。
 ところが一般人がタクシー代わりをして小遣いを稼ぐのは、リストラ、倒産、低賃金で生活が苦しいからである。それをオンデマンド労働で穴埋めしているに過ぎず、いつも収入が不安定である。タクシー業界は巨大企業ではない。これがアメリカの格差拡大を加速する「底辺への競争」の象徴でもある。
 限られたパイを弱い者同士が奪い合う。それが底辺を目指す弱者の競争である。全米でオンデマンド・エコノミーで収入を得たことのあるものは4500万人に達し、その勢いは止まらない。弱者が食っていくには、副業を増やすしかないため、弱者が食い合うことでさらに弱者となり、中間層が消えて社会格差が拡大し、合法的脱税で税金を納めない新富裕層が収益を無尽蔵に拡大する構造になる。これが究極の合理主義競争社会である。
 すでにアメリカでは自分のサービス度が瞬時に「コモディタイズ」されている。コモディタイズとは、困ったら呼んで、必要なければ首にするシステムが常習化した状態をいう。タクシー代わりの一般人を例にすれば、誰を呼んでも同じなので、均質化が加速することを言う。そうなれば差別化もなくなるため、高いサービスがなくなる分だけ低価格競争が加速し、結果としてさらなる低賃金に向かっていく。「あの人物を正式に雇っておかなければ、いざとなったら来てくれない」という今までの常識が霧散し、マニュアル化の中でスペシャリストの正社員も必要なくなる。この状態を「ウーバーナイズ」といい、終身雇用で安泰な生活などない社会が形成されていく。
 2000年以降、アメリカ経済は生産性が上がっても、雇用が伸びない状況が続いている。この現象を「グレート・デカップリング」といい、生産性と雇用が連動しない有様を言う。特に2008年の「リーマンショック」以降、アメリカでは国内総生産(GDP)が回復する一方、雇用が増えていない。デカップリングとはカップリングしなくなった現象、つまり、それまで連動していたものが連動しなくなることを言う。
 このころ、小泉内閣の竹中平蔵は、「富裕層減税や法人税減税をすると、国内に投資が回り、国民の雇用が創出され、みなが豊かになる」と主張し、それを継承した安倍内閣もアベノミクスで大企業優先の格差社会を定着させ、10年後の無正社員社会目指している。日本の先を行くアメリカは、イノベーションが進んで、生産性が向上したにも関わらず、労働者の賃金は低く、雇用も少なかった。その理由は何なのか?
 なぜ生産性と雇用が連動しないのか? その答えは「デジタル技術」にある。ITといってもよい。小規模で済む企業資産が8兆円を超えるのは、極端なIT化による人員整理にある。最少人数で莫大な利益を生むためには高度な情報処理が不可欠で、それを稼働させれば、運転手の正社員など必要なくなり、使い捨ての一般人を利用すれば済むだけの話である。
 次の段階では、一般人の運転手も不要となる。AIの時代が来るからである。情報処理の究極の姿が人工知能である。このAIやロボットが、24時間無報酬で働くようになれば、一般人の運転手も必要なくなる。未来社会は、機械が人間の仕事を奪う超合理社会である。
 「技術は常に雇用を破壊するが、常に雇用を創出する」常識は、古い仕事が姿を消すのと同じ速度で新しい仕事が生まれ、そのバランスがいつの時代も保たれてきた。ところが、現代の雇用破壊が雇用創出より速く進んだ結果、労働者不要の未来社会が誕生しようとしている。
 アシュケナジー系ユダヤにとれば、ほとんどの無宗教の日本人は虫けら以下の存在である。日本ですべての原発を再稼働させた後、人工地震と津波で崩壊すれば、全員を駆逐できる。自民党はそれを前提にアメリカのシンクタンク「CSIS(戦略国際問題研究所)」の命令を受け、着々と原発再稼働を進めている。