2017
06.09

北極で何かが起きている : 夏なのに北極海の氷面積が急激に増加に転じ、ニューファンドランド島には突如として「氷河」が誕生。そして、太陽活動はさらに低下を継続中

北極, 地球環境

北極を中心として、奇妙なことが起きています
 今は、地球の北半球は季節としては夏に向かう時ですので、北半球の極である北極も夏に向かいます。したがって、例年は「氷が溶けて、少なくなっていく」のが普通です。
 ところが、上の比較のグラフを見てもわかる通り、今年5月に入ってから「氷の面積が急激に増加している」のです。その増え方も相当急激に「大量」に増えていることがわかります。
 下は、上のグラフの5月中旬くらいからの部分を拡大したものです。
5月に入ってからの北極の氷面積の比較

 北極を中心として、奇妙なことが起きています。今は、地球の北半球は季節としては夏に向かう時ですので、北半球の極である北極も夏に向かいます。したがって、例年は「氷が溶けて、少なくなっていく」のが普通です。ところが、上の比較のグラフを見てもわかる通り、今年5月に入ってから「氷の面積が急激に増加している」のです。その増え方も相当急激に「大量」に増えていることがわかります。
 下は、上のグラフの5月中旬くらいからの部分を拡大したものです。
5月に入ってからの北極の氷面積の比較

 過去の平均ではこの時期にゆっくりとした氷の減少を見せていますが、今年はそれとはまったく違う線を描いています。何が起きているのか。
北極に起きていること
 北極の氷面積の急激な増加は、たった2週間ほどの期間の変化が「衛星写真でもわかるほど」で、相当急激な変化だということがわかります。
2017年4月30日から5月13日までの衛星写真による北極の氷の変化

 このような、近年の過去では見られないような「夏の氷の増加」という現象に現在の北極は見舞われているわけですが、まずは、この事象を取りあげていた記事をご紹介し、その後に、さらに最近、太陽活動の減退がさらに明らかになってきたことにもふれておきたいと思います。
 寒冷化やミニ氷河期の到来というのは、短いスパンで変化が起きるというものではないでしょうが、少しずつこういう変化も顕著になっきているということなのでしょうかね。
 まずは北極の氷についての記事をご紹介します。
Barents Sea Grows Ice in May Science Matters 2017/05/15
北極海は5月になって氷が増大している
 北極の氷に何か驚くべきことが起きている。5月は本来なら北極の氷が溶けていく時期に入っているはずだが、今年は5月になってから、バレンツ海(北極のヨーロッパ側の海)の氷面積が拡大し続けているのだ。
衛星画像を見ると、4月以来、氷面積が後退せずに拡大している様子がわかる。
 下のグラフ(今回の記事の冒頭のグラフ)は、2017年の 4月以来の氷面積の拡大が平均を上回っていることを示している。
この氷面積の拡大は、大部分がバレンツ海においてで、面積の拡大は、5月中旬の 5日間だけで 8万5000平方メートルに及び、氷面積は、57万2000キロメートルに達した。
 この北極の氷の異常な成長についてのいくつかの洞察は、大気環境学研究室(AER)の 2017年5月8日の北極地方の報告書にも記されている。そこには以下のようにある。
 現在、主に北極圏の北大西洋側に「地表電位の正圧」の高さの異常が集中しており、北半球の中緯度を越えた場所では「地表電位の負圧」が集中している。これにより、5月の北極振動(AO)と北大西洋振動(NAO)が記録的なものとなっている。
 また、北極の大西洋側では、ニューファンドランド島の海岸沿いに 1980年代には見られなかった氷河が目撃されているという報告がある。

下は、NASA の衛星が撮影した 2017年5月5日のニューファンドランドの海氷状況だ。

 最後のほうにある大気環境学研究室の文書の表現は何だかよくわからないものだと思われるかもしれないですが、この「北極振動」とか「北大西洋振動」など、現象に「振動」とついているのは「平年との海水温度の差」のことを言います。
 たとえば、エルニーニョ現象は、日本語では「南方振動」といいます。
 エルニーニョ(南方振動)は「太平洋の赤道あたりの海水温度の平年との差異」を示しますが、「北極振動」とか「北大西洋振動」も、その海域の海水温度の「平年との差異」を示すもので、簡単に書けば、
 「現在、北極圏の海の海水温度が通常とは大変違うことになっている」という意味だと思います。
 また、ニューファンドランド島は北米大陸の東の端にある島で、どうやら、ここに「氷河」が出来はじめているということのようです。
ニューファンドランド島の位置

 そういえば、今年4月に、このニューファンドランド島に、「北極から巨大な氷山が流れてきた」という出来事が起きていたことを思い出します。
2017年4月17日 ニューファンドランド島の海岸にて

 ニューファンドランド島でこのようなことが起きたことは過去にはなく、これが初めてですので「北極のほうで何か起きている」というような感じはありました。そんなわけで、夏の氷面積の拡大を含めて、どうやら北極のほうで何かが進行しているらしいという雰囲気が強くなっているようですが、これが一時的なものなのか、あるいは、このまま地球はミニ氷河期に入って、私たちはみんなマンモスのように氷の中に閉じ込められたまま凍ることになっていくのか(そんなことにはなりません)。いずれにしても、秋頃までの北極の氷の状況を注視したいですね。
 最近の太陽活動についても簡単にご紹介しておきます。
さらに弱くなり続ける太陽活動
地球が今後、温暖化に進むのか、それとも寒冷化に進むのかという選択はともかくとして、その地球の気温の傾向を決める条件は多々ありますが、過去に取りあげた大きな要因として、
・太陽活動
・歴史的なサイクル
 があります。
 歴史的なサイクルについては、最近も、
・「過去3000年間加速し続ける地球の寒冷化を止めることはできない」 : 南極とグリーンランドの氷床コアが語る地球過去45万年のサイクルから見る「今はまさに氷河期突入直前」だという強力な示唆
 過去の地球は「10万年ごとに氷に閉ざされるサイクルを繰り返してきた」

 こういうサイクルの中で地球は歴史を重ねているのですが、もうひとつ気温を作用する条件として「太陽活動」があるということも過去何度か取りあげたことがあります。
 基本的には、「太陽活動が弱い時期は地球は寒冷化する傾向にある」ことが、この数百年に関しては比較的はっきりしています。
 この「太陽活動と地球の気温」に関しては、
・地球は「4000年間の温暖化」を終了し、これから長い寒冷期へ。そして、「地球の気候変動の原因は太陽活動にある」という内容を持つ科学論文の数が2016年には130件以上に及び過去最高に太陽と気温の関係は実にはっきりしていまして、たとえば、下のグラフは、1850年から 2016年までの「地球の気温の変化と、太陽黒点の数の関係性」を示したものです。
過去160年間の黒点数と地球の気温の相関関係(現在の気温は過去4000年で最高)

 こういうグラフを見る限り、非常に単純に考えてみれば、「太陽活動が低下していくと、地球の気温もまた低下傾向を示す」と言っていいのではないかと思います。
 では、その太陽活動の現在はどのようになっているのでしょうか。
 太陽活動が低下し続けていることは、今は「さらに弱くなっている」と下記の図で示されています。
 この現在の太陽活動の低下については、また別の機会にきちんとご紹介したいと思いますが、下は 2017年3月までの太陽活動の状況を示す図です。
 フラックス(Flux)と呼ばれる「太陽から放射される電磁波」の量を示したもので、太陽が地球に与えているエネルギーの強弱を示します。
2014年から2017年の太陽エネルギーの推移

wattsupwiththat.com
 2014年頃でも、十分に太陽の活動は弱かったのですが、さらに弱くなり続けているようです。
 この太陽の気温への影響が今後急速に起こるものなのか、そうではないのかはわからないですが、気温だけの問題ではなく、しばらく私たちは太陽の影響が小さくなった地球の中で生きていかなければならないようです。
 そして、おそらくとしか言いようがないですが、それに伴い、地球全体の気温にも変化が起き始めるのではないでしょうか。

(くまチューブ)