2017
09.15

早朝サイレン再び=「不安」「早く落ち着いて」―漁業関係者ら困惑・北朝鮮ミサイル

Topic, 北朝鮮, 半島問題

再びJアラートが鳴り響いた。

 北朝鮮が15日朝、弾道ミサイルを発射した。中距離型とみられるミサイルは、先月29日同様、北海道上空を通過し、太平洋上に落下。「脅威だ」「どこに逃げれば」。早朝から対応に追われる自治体や漁業関係者。今月3日に核実験を強行したばかりの武力の脅しに、拉致被害者家族は問題が置き去りにされることへの不安を漏らした。

 ミサイル発射を受け、北海道や青森の漁業関係者やフェリー運航会社からは不安や戸惑いの声が聞かれた。

 北海道のえりも漁協の岩船博之さん(50)は「(8月にミサイルが落下してから)『どこに逃げたらいいのか』『どうしようもないな』と漁師らと話していた。着地点が分からないと、どう船を動かしたらいいかも分からない」と困惑気味。根室漁協の総務担当者も「今回は遠くに落ちたが、沖合200キロになったらと思うと不安」と話した。

 青森県漁連は県内の漁協で被害が出ていないか確認に追われた。今はイカ釣りなどのシーズンで、操業中の漁船もあるという。対応に当たる男性職員(51)は「不安だが、本土に落ちる可能性もあり、漁業者だけの問題ではない。北朝鮮にミサイルを発射させないようにするしかない」とうんざりした様子だった。

 苫小牧―八戸間でフェリーを運航する川崎近海汽船(東京都千代田区)では、ミサイル発射の知らせを受け苫小牧港での貨物の積み込み作業を一時中断した。最近は予約客から「ミサイルが船の近くに落ちたらどうするのか」との問い合わせも相次いでいるという。同社フェリー部の嶋村嘉高副部長(49)は「領海内には落下しないと思うが、返答に困った。早く状況が落ち着いてほしい」と話した。

 ◇「蚊帳の外」「交渉を」=拉致問題へ影響懸念―被害者家族
 「拉致問題が蚊帳の外に置かれる」「米国と一緒に交渉を」。北朝鮮のミサイル発射が伝えられた15日午前、拉致被害者家族からは懸念の声が上がった。拉致問題を北朝鮮が認めた日朝首脳会談から15年となったが、被害者の帰国に向けた動きは見えない。

 市川修一さん=拉致当時(23)=の兄で、鹿児島県鹿屋市の健一さん(72)は「拉致問題が風化するのが怖い」と漏らす。北朝鮮の核実験やミサイル発射にばかり注目が集まる現状は、家族にとって拉致問題への関心が低下しているように映る。「政府はもっと積極的に取り組んでほしい」と訴えた。

 「日本だけでは拉致問題の解決は無理だと思っていた」と淡々と語るのは、有本恵子さん=同(23)=の母で、神戸市の嘉代子さん(91)。北朝鮮がミサイル発射や核実験に固執するのは米国と直接交渉したいからだとみる。体調は思わしくない日々が続くが、「トランプ米大統領と協力して交渉するしかない。娘が帰ってくるまでは生き続けないと」と語った。

 横田めぐみさん=同(13)=の母、早紀江さん(81)は「(これまで)言っているのは拉致のこと。(ミサイル発射は)エスカレートしているというぐらいしか分からない」と言葉少なだった。